夢を追うのをやめたって生きていける①
父にあこがれて大工を目指す23歳 男
建築系の写真
だった。
小さいころに自分の部屋の勉強机を
父が作ってくれた
ホームセンターで木を買ってきて
庭でトンテンカンしてる父を見てかっこいいなと思った
夏休みの自由工作も一緒に作ったし
あとからきくと実家の設計は父がしたらしい
高校は父と同じところにはいり
就活はインターン先が好感触すぎてしてなかった
3年の春、そのインターン先に今年の採用はないと言われ
急遽進学に進路を変更
勉強は好きだったので
就職も進学もやることは変わらないと思っていた
先生の協力もあり
面接では教員の道も考えています
と言ったものの
実際は建築しか勉強していない
教員になれた選択肢を捨てて
建築の道一本に絞ったのは
父にあこがれていたから
教員までやってしまったら
せっかく手に入れた働かない期間を
また勉強だけで終わらせてしまう、、、
とも思っていた
どういう存在になりたいか
という具体的な目標はなかったが
ただ、父のやっていたことが知りたかった
体験したかった
それだけだった
父と会話がしたかった
のかもしれない
しかし建築の世界は想像を超えて危険なものだった
それが管理されていればいいものの
安全パトロールがくるからキレイにしよう
あれ落ちたことないんですか?あるよ
そんな会話が飛び交っていた
挙句の果てには
自分の身は自分で守れ
って
1年でやめた
20年以上追いかけてきた夢
疲れた僕は旅をしたくなった
といっても東京周辺を車で駆け巡って
駐車場で寝る
というもの
あまり有意義なお金の使い方はしていない
家を出るときに家具はほとんど捨てたので
ものもなんにもない
節約なんてものは考えていないから
1か月ほどで貯金は尽きて
実家に帰った
しかしまだ旅がしたい
そこで始めたのがリゾートバイトだった
観光地のホテルに住み込みで働くというもの
これがまあ楽しかった
初めに行ったのは冬の山形のスキー場
朝は早いけど
ご飯の配膳とかたづけをしたら
まかないをたらふく食べて
使用していないレンタル品を借りてスノボをして
帰ってきたらまた晩御飯の支度をして
おわったらまかない
温泉に入って就寝
最高すぎないか?
まかないは
だいたい残り物かまかないがつくってあるので
たらふく食べた
よく食べるキャラが浸透してくると
スタッフも食べ物を分けてくれた
僕用にご飯をたくさんたいてくれることもあった
スノボはいままで2,3回しか経験がなかったので
リフトに乗りながらyoutubeを見て勉強した
リフト券もホテル提携のものを借りていた
毎日ただでたらふく飯を食べ
毎日スノボを滑りまくった
おかげで体は健康そのもの
お金を使うことがないので
給料が低くても遊びに行けた
しかし
家の環境が劣悪すぎた
寒すぎる
暖房のききも悪い
スタッフは仕事の不満ばかり
それが一番大きかった
ある休みの日
寒いのでスタッフの休憩室でゲームをしていた
するとちょっと偉い人がきて僕になにかはなしている
ゲーム中で手が離せなかったしイヤホンもしていた
その態度が気に食わなかったのか
「でてけ!!!!!」
と怒られた
不満もつのっていたところだったので
素直にレンタル品を返して出ていった
手紙を置いていったので給料だけはちゃんといただいた
いまこうして書いていると
とんでもなく社会不適合だな
と思ってしまう
そして次の地へと向かった
次は熱海のホテル
「調理やってみませんか?」
とエージェントに言われ
「自炊しかやったことないですけど、、、」
と自信のないなか
家庭用包丁を買いなおして新しい職場へ向かった
初日
玉ねぎとパプリカのみじんぎりに
3時間かかった。
自分の技術のなさに笑えて来た
経験ほぼないのでしかたないのだけど
そこで僕は目の前にいたやけに手際のいいチャラ男に
教えてもらうことにした
「お前だったらこのみじん切りどうする?」
チャラ男はエッヘンといった具合に
「おれだったら~」
とたくさん教えてくれた
そんなこんなで厨房のいろんな人に
たくさん教えてもらいまくって
いろんな業務を覚えた